ローマ人の物語(12)

1世紀から2世紀のころは,あれだけ自信にあふれていたローマ帝国が,遂に斜陽に突入する3世紀のころの話.ローマ人たちが自信を失なっていくのが残念で,なかなか読み進められず,1年もかけてしまった.

この時代のローマ帝国では,次から次へと皇帝が変わり,100年で総勢20人以上もの皇帝が表われる.皇帝は終身制なので,皇帝を不信任する手段としては殺すしかないので,暗殺が頻繁に発生したらしい.ただ,中国のように一族同士の陰湿なものではなく,大抵は,部下に殺されている.ローマの皇帝は,終身制ではあるけれども,世襲ではない.この時期の皇帝達は,貧しい農民の出身で軍隊で頭角を表わして皇帝になったというパターンが多く,その親が誰かも分かっていない,ということが,一般的な皇帝のイメージとのギャップがある.

また,この時期のローマ帝国では,それまでうまく機能していた規則が,だんたんうまく作用しなくなっていたようだ.ローマ帝国のように数百年も続く国だと,ある皇帝が決めた規則が,その後の数百年を左右する.そのため,ある政策を実施してから,当面は(といっても数十年単位である),うまく機能したが,百年後ぐらいに致命的な問題を引き起こした,などという記述が出てくる.政策決定の時に百年後の事象まで予測することを期待されても,ほとんどどうしようもない.当時とは,世の中のスピードが段違いとは言え,現在では10年後の予測も困難だというのに,当時の皇帝達は,なんとも偉大なことだ.