模倣犯

宮部みゆきの「模倣犯」は,700ページの厚さで2冊という,長めの小説である.もう3,4年前の作品で,ずっと文庫本化を待っていたのだが,ブックオフで2冊\1,000で見つけたので,先週の土曜に衝動買いをした.今までの経験から,宮部みゆきは読みだすと止められないことが分っていたので,読み始めるタイミングが重要であることは分っていた.しかし,手元にあると気になるもので,少しだけ,と思って読みだしてしまったのが運のつき.結局,寝るか食うか風呂に入る以外は,ずっと読み続けてしまい,月曜の午前3時までかけて一気に読んでしまった.

さすがに宮部みゆきだけあって,抜群に読ませ上手.ストーリーも面白く,特に序盤から中盤の盛り上りは,最高に面白い.ただし,宮部みゆきの限界なのか,終盤からエンディングにかけては,少しいただけない.序盤から中盤は,全能に近いように感じられ,登場人物を不安と混乱に落し入れていくのだが,宮部みゆきによくあるパターンだが,終盤では,犯人も結局は「ただの人間」という結末になる.ここで,どうしても,なーんだ,と思ってしまい,今ひとつの物足らなさを感じさせる.すこし記憶があいまいだが,「火車」なんかは,そのあたりをうまく処理できていたような記憶があるが,「模倣犯」は残念ながら,オチが弱い,というところから抜けだせなかったようだ.

ともあれ,全体としては類を見ない作品であることは確かなので,途中で読むのを中断する意思の強い人か,一気に読む時間のある人には,是非お勧めである.

模倣犯〈上〉

模倣犯〈上〉